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SPECIAL INTERVIEW 2018

市川紗椰

レコードは、一瞬にして音に包みこまれて空気が変わる感じがするんです。

アナログレコードの魅力に気軽にふれていただこうと発足したレコードの日が、今年も11月3日に開催される。今回のイメージキャラクターは、人気モデル、タレントの市川紗椰さん。鉄道や相撲などにマニアックな知識を持つことでも知られているが、5歳からバイオリンを習い、趣味でギターも弾き、小学生の頃からロックやJ−POPを聴いて来たという音楽好きでもある。特に音楽家でもあったお父様の影響もあり小さい頃からアナログレコードを聴いてきたとか。ヴィンテージ・ロックから日本の歌謡曲まで幅広く聴く彼女ならではのレコードへのこだわりを話していただいた。

取材/構成:今井智子
撮影:平間至
撮影協力:カフェ&レコーディングハウス guzuri

──お父様の影響でレコードを聴くようになったそうですね。

市川 父がビートルズ世代で、ロックが好きなので、家にレコードもCDもいっぱいあって、聴く機会もいろいろありました。

──お父様はどんな音楽を聴いていらしたんですか

市川 父はアメリカの南部出身なので、ブルーグラスやブルースロックを含め、ロック全般が好きですね。それに、ギターをやっていて学生時代にスタジオミュージシャンとして参加した作品もありました。一番最初に聴いたのは、父が参加したレコードだと思います。

──市川さん自身で選んで聴いた最初のレコードはどんなものだったんでしょう。

市川 小学校の頃からロックが好きだったので、父の影響で聴いたイギリスのロックバンド、クリームですね。クリームは「Badge」という曲を初めて聴いた時、小学生の私にはブツッと終わるのがすごく斬新で(笑)。レコードでかけるとCDとは空気が違う、というのはすごく印象に残っていますね。いつも車で聴いている曲なのに、レコードで聴いたら、フワッと一瞬にして音に包み込まれる感じだったのを覚えています。

──その原体験から音楽やレコードへの関心が広がっていったんでしょうか。

市川 そうですね。レコードに限らずカセットとかCDがメインですが、レコードでは80’sのロック、ポイズンとかホワイトスネイクとかを聴いていました。

──学校のお友達と一緒に盛り上がったり、とか?

市川 いえ、全くなかったです。バイオリンをやっていたので、クラシックの話をしたりはしましたが。小6の時に学年でスパイス・ガールズが流行っていたんですけど全く響かなくて。アラニス・モリセットが好きだったんですけど、クラスの誰も聴いていないのがショックでした。中学になってから、やっと音楽好きの仲間ができて話をするようになったんです。それまで私はすごい人見知りだったんですけど、音楽の話とか趣味の話だったら気にしないで話せて。それでどんどん調べて聴いていって、コミュニケーションツールとして音楽の趣味を深めた感じです。中学の時はザ・スミスやピクシーズや、グランジぽいのが好きで、そのひとたちが影響を受けたものを掘り下げていくのが多かったですね。当時はデトロイトに住んでいたんですが、デトロイトはMC5とかホワイトストライプスとか個性的なバンドが登場したり、モータウン(60年代に始まり新しいソウル・ミュージックの流れを作ったレーベル)とか、独自の音楽文化があるんです。スーパーとかでよく流れている、そういう地元の音楽を聴いたりしていましたね。

──撮影で、ザ・スミスのレコードをずっと手にとってらっしゃいましたね。

市川 はい、とても好きでした。あとはテレヴィジョンとか。父の影響でメンフィス・ソウルとか南部系の音楽も好きでしたので、ビッグスターといったバンドも好きでした。アメリカに住みながら日本の音楽も好きだったので、いとこたちにテープを送ってもらって、J-POPもリアルタイムで聴いていました。ハロプロが好きで、「太陽とシスコムーン」とかメジャーなものが好きでした。

──今日お持ちいただいたレコードの中に、しばたはつみさんの作品がありますが、歌謡曲にも関心が?

市川 大好きです。歌番組の映像とかで知った曲をレコードで聴くと、それまで耳に入ってこなかったようなコーラスに気付いたりするんです。それで歌謡曲はレコードで積極的に聴くようになりました。

──ザ・タイガースもありますね。

市川 これは母のものなんですが、いらないというので私が(笑)。こういう古いレコードはライナーノーツとかポスターが付いていて楽しいですよね。これはメンバー全員の手形が付いてるんですよ。手形って力士でしか見ないですよね(笑)。こういうのは楽しいですね。

──こちらの寺内タケシとブルージーンズは?

市川 これは最近、札幌だったか地方に行った時に見つけて買いました。時代が詰まっている感じで楽しいんです。新しい作品も聴きますが、中古盤を探すのが好きですね。中古盤だと音が飛ぶところとかに、前の持ち主はここをよく聴いたんだってわかる考古学的な面白さもあるんですよ。

──いきつけのレコードショップは、ありますか。

市川 御茶ノ水とか神田、新宿、高円寺、吉祥寺など都内でよく行くお店は幾つかあります。地方に行った時に地元のレコード屋さんに行くのが好きですね。その町の特色がわかるから面白いんですよ。珍盤ばかり大量にあるとか、プログレばかりだったりとか。東京だとお店の人とは話したりしないのに、地方だとお喋りしたり(笑)、東京なら買わないものを買っちゃったり。寺内タケシとブルージーンズはまさにそうですね(笑)。古本屋も同じ理由で好きなんです。全然町によって違うので、面白いですね。

──市川さんは、鉄道や相撲などにもお詳しいですけど、音楽も含めてそういう趣味を追求していらっしゃる印象です。

市川 趣味のつもりもないんですけど、興味あるものが偏っているだけで(笑)。理にかなっているものが好きですね。鉄道もそうですし、相撲は、ここを押したらこう崩れるとか、理にかなっているから面白いんです。それと鉄道も相撲も、先ほど話した地方のレコード屋さんもそうですけど、地域性が出るものが好きですね。楽しみ方はみんな似てるんですね。

──レコードだとジャケットを飾ったりもしたくなりませんか。

市川 そうですね、ものとして単純に迫力があるので飾ったりします。いつか大々的に飾りたいと思って、モノクロで顔のアップのジャケットを、10年ぐらい集めているんですよ。最初は気付いたら何枚か持っていたので、ちょっと並べていた時があって、これを壁一面にしたらいいなと思ったんですね。それでインテリアの人にお願いしてレコードを飾れるような壁にしたんです。その時にやるつもりだったのが、引っ越してそのまま(笑)。いつかやります。

──そんな風にレコードは音だけではない楽しみ方ができますよね。

市川 やはり情報量が多いですよね。ライナーノーツとか、いろいろ入ってるじゃないですか。それがレコードならではの魅力。ジャケットの仕掛けが面白いものもありますね。ジェスロ・タルの『Stand Up』(ジャケットを開くとメンバーのイラストが立ち上がる)とか、子どもの頃に好きでした。今は持っていないので、見つけたら買いたいですね。

──市川さんは以前からレコードを聴いていらっしゃいますが、最近は女性のビギナーも増えているのはなぜだと思いますか。

市川 私もそうですけど、手に取ってグッズ感覚で持つ人が多いんじゃないでしょうか。音楽でも好きなひとのはダウンロードだけだと物足りないと思っている人は、やっぱり手に取ってコレクションとして欲しいというのがあります。それに、1回CDで聴いたものをレコードで聴いた時の、音に包み込まれる感じ、包み込まれて空気が変わる感じがするんです。音楽好きだったら絶対、その音色の変化とかもわかりますし、気づかなかったベースの音が耳に入ってくる楽しさとか。私はストリーミングも利用していますけど、そのサービスが終わったら聴けなくなる不安があるじゃないですか(笑)。私は心配性なので、持っていないと不安で、レコードやCDを買ってしまうんです(笑)。それに、私はアニメも好きなんですけど、アニメのDVDを買う時、作品を見たいというよりその作家さんに次作を作ってくださいという投資として買ってる感覚があるんですよ。レコードもそういうオタク心理が働いているのかもしれない。アーティストをサポートしてあげたいというか、次の作品が聴きたいから、という感覚があります。

──市川さんが感じるレコードならではの楽しみは?

市川 レコードは、本当に聴くため、その世界に入り込むための最高のソフトだと思います。不便なところも含めて。実際、他のことができないじゃないですか。レコード聴きながら他のことをしていると、A面が終わって止まっていたり。だからちゃんと向き合って聴く感じになりますよね。あまりそう言うとハードル高くなってしまうのでサラッと聴いていただいていいんですけど、自分でセッティングして、たまにメンテナンスもして、ちゃんと鑑賞します、という感じが楽しいですね。ちょっと面倒臭そうと思われるかもしれないけれど、手に取ってみたら、みなさん面白いと思うと思うんです。溝に音が入ってるってこと自体が不思議で、音が柔らかくて丸みがある。レコードが好きと言うと懐古趣味で、雑音がいいんだよ、みたいなイメージを持たれますけど、そういうことではなくて。CDなどデジタルなものと音が違うというのは音の情報量が違うからで、アナログレコードの音にもちゃんと理由があって面白いんですよね。そういうところがアナログならではの魅力だと思います。